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RFIDをめぐるプライバシー

RFIDプライバシー関連の研究について、Webで調査をしていたコロラド大学研究員の方から10/5に
メールを頂いた(ひゃ?ビツクリ)。リクエストに答えて送った資料と、頭の中のダンプをメモしておきます。
<資料>
1)Traceability System for Disclosure(Keio).pdf
 2004年9月のAuto-ID Labs Workshop Zurichで発表したもの。Auto-ID Labsは、RFIDの学術研究
 組織。世界6拠点の1つが慶応大学。他は、MIT(米), Cambridge(英),Adelaide(豪), Fudan(中),
 St.Gallen(スイス)。EPCNetworkの普及を図るEPC Globalと連携している。
2)RFID入場券システムにおけるプライバシー意識に関する考察.pdf
 2004年11月の経営情報学会秋季大会の予稿。
3)プライバシー研究メモ.pdf
 上記予稿のためのプライバシー概念に関するメモですが、最終稿からは省いたもの。
 冒頭の方がWebで見つけてくれた2003年度のネットワーク社会論の授業資料に一番近い内容。

<脳みそダンプ>
私にとって、RFIDは、トレーサビリティを実現する識別技術のひとつ(他は2次元データコード、バー
コードなど)で、最も注目している技術という位置づけ。注目している理由は、リサイクルやリユース
も含めたトレーサビリティシステムの普及には、個体識別が可能なRFIDの活用が鍵となるから。

RFIDをめぐるプライバシー問題は、消費者の手もとを流通する商品にRFIDが貼付される際に派生
する問題で、ほうっておくとRFIDをトレーサビリティシステムで活用できなくなってしまうと思っています。
RFIDをめぐるプライバシーは新しい分野だけに先行研究があまりありません。でも、社会的受容を
得てRFIDを利活用していくためには、避けて通れない研究です。そうした観点で、そもそもはプライ
バシーや個人情報保護法の専門家ではない私もプライバシー問題を調査しています。

上述の資料では以下のことを書いています。
・トレーサビリティに取り組み情報開示することは、企業イメージを高め消費者の信頼を得られる
・プライバシー保護のためには利用者へのNoticeが重要であり、企業側にもNoticeのインセンティブが存在する。
Noticeは、RFIDを活用する組織が、利用者に対し果たすべきアカウンタビリティのひとつですが、
最近は、NoticeはNoticeでも、日本語で言うと「告知」ではなく「認知」まで実現しないとダメなの
かなという思いがしています。

ID技術は、visibilityを高める技術で、visibilityが高まることの光と影を考えた場合に、プライバシー
侵害は影の部分になります。私は経営学の視点なので、私達消費者は利便性や安全性とプライバ
シーを天秤にかけて、商品やサービスを消費していると思っています。判断する際に重要なのが、
個人情報を提供する相手に対する「信頼」で、アカウンタビリティは、RFIDをめぐるプライバシー問題
を解く鍵だと思っています。

冒頭の方からは、「大量のNoticeが送られてきた場合に個人がこれをどう消化できるようにするか」
という問いかけもいただきました。確かに情報処理は大きな課題だと思います。人の認知限界を超
える多量の情報が流れているので、自己情報コントロールなど現実的には不可能ではないかと思っ
ています。自分に代わって監視してくれるITサービスや、ネット上の情報のクリアリングサービスなど、
新しいビジネスが出てくるのでしょうね。
それと共にプライバシーの概念自体も今後も少しずつ変わっていくのでしょう。

補足ですが、visibilityは監視社会論の分野でいう透明性や、海外の生産管理・プロセス管理の分野
の論文でobservabilityと言われたりしているものと、概念的に重なると思っています。
実は来週、まさにobservabilityという知る契機になったCambridgeの研究者Dr. Duncan McFarlane
会いに行きます。今週末は準備のためベイズ統計をにわか勉強しなくちゃいけません。(ひぃぃ)

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2004年10月11日 21:06に投稿されたエントリーのページです。

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