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2004年04月19日

文献:Yin, Case Study Research

Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods", Sage Publications, 2002.
秋学期の先端研究Kでも読みましたが、春学期も最初はこの本。
半年前より「なるほど」と思えたりするのは、実際ケース論文を少し書いてみたり、
他の研究方法論の本と比較できるようになったためなんですね。→?
あれよあれよと終わってしまったD1でしたが、ほんの少しは成長した気がする今日この頃。

→? これ、お勧めはキング・コヘイン・ヴァーバの『社会科学のリサーチデザイン』。
著者の頭文字から通称KKV。SFCでは金子先生の概念構築Kの教科書。Yinともども、
とくにSFCの社会科学系を自負する博士課程なら読んでおくといいと思う。勿論、KKVが
ハーバードの政治学の学生向けに書かれた本である点は踏まえておくべきでしょうが。

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2004年05月22日

Burt "Structure Holes"

 花の金曜日(死語)は奥村先生の輪読会メンバーで先生のテリトリー六本木へ。この輪読会、Burtの
"Structure Holes The Social Structure of Competition" を読んでいます。只今2章の途中ですが涙出る
くらい「難解」(;ー;)。現状、私の拙い理解では「人間関係、嵌るべからず」。友達の友達が友達ならば、どなたかとだけ
つきあえばいい、つながりがない(Structure Holeがある)ネットワークに属する人ひとりずつとつきあいましょう、ということです。
 こう書いてしまうとこの理論の実践者は「イヤな奴」だし、私も、頭で人間関係を計算してる人とは付き合いたくない
と思ったわけですが、実際はそうじゃない。あくまでビジネスの話で、誰でも24時間365日の時間の中で生きていて、
交際できる人数には限界がある。ならば、機会を掴もうとしているベンチャー企業家は(やはり奥村輪読会なので(^^)この話題)
こう行動するだろうと納得できる。実際、千葉でお会いした超エネルギッシュなネットワーカー柳田さんなどは、自然とこうやって
らっしゃてて、しかも、ご自分の財産になっているだけでなく、周囲の人にとっても、柳田ネットが人脈の源泉になっていて、WinWin。
 Burt理論を現実に当て嵌めてみて、初めて理解できるわけです。でも、この当て嵌める作業がなかなか難しく、ひとり
で読んでいたんじゃ、こんな風には理解してなかっただろうなぁ。まぁ、こんなことをまじめに議論する会なのですが、
宴は宴で予想通りの盛り上がりを見せ、六本木の夜は更けたのでありました。奥村先生、ばんざぁい♪お陰様で楽しかったデス

  Le Dragon Blue
  港区虎ノ門3-21-5 愛宕ヒルズプラザ2F 03-5773-3771  
  トムヤムクンと海鮮焼きそば”平打ち麺”がオススメ。

2004年06月01日

沼上幹、「われらが内なる実証主義バイアス」

昨日の先端研究Kの文献購読、本日は以下の3点。
1.沼上幹、「われらが内なる実証主義バイアス」、組織科学、Vol.33、No.4、2000年、32-44ページ.
2.吉川博之、内藤耕編著、『第二種基礎研究』、日経BP社、2003年.
3.吉川弘之、富山哲男、『設計学?ものづくりの理論』、放送大学教材、2000年.
1と2は研究方法論で、研究者向け。第2種基礎研究は、実は、学際的な社会科学の研究のことを指す。
工学分野の言い回しで超文系の私には馴染みにくい表現だったけど、内容はいい。基礎研究と産業界をつなぐ架け橋的研究の必要性を説く本。


」」」」」」」


レジメはこちらに。

2006年03月02日

大学教授の条件

岡部光明先生の『大学生の条件、大学教授の条件』を読んだ。
著者の研究者観や教育観が、学生へのメッセージ、あるいは、大学教授の3条件として
綴られているのだが、読んで、岡部光明という一人の人間の価値観を垣間見た気がした。

大学生よりは、むしろ、大学教授を目指す博士課程が一度読んでみるといい本かな。
大学教授ってホント"不思議な職業"。教育課程の修了義務もなく資格試験もない。(pp.139)
『研究者・教育者として』の価値観や規範を自分で創ることが求められてるんだろうけど・・・
私達タマゴは、多くの"教授"に会う機会はあっても、内面的な『研究者観・教育観』を学ぶ
機会はなかなかない。少なくとも私はそう。だから、この本は私にとっては参考になった。

ここ数ヶ月、"総合政策学とは"を、政策COEの博士課程仲間で議論してきた。
岡部先生は私達の勉強会に参加し、ご自分の「総合政策学観」を説き、一緒に議論してくれた
数少ない先生のひとりだ。「本当に若手を育てようとしてくれている先生」と思ってはいたけど、
この本を読んで、岡部先生に対する親近感がますますUPした。

実はCOEの重点目標のひとつは「若手を育てる」。でもお忙しい教授陣はほぼ放置が現実。
これってどうなんだろうって思う。まぁ勝手にやれていい面もあるんですが、せっかくだから、
もっと交流試合、したいよなぁ。って、他人任せじゃいけないんですけどね。

2006年06月09日

小川進「競争的共創論」

小川進先生から新著を送って頂いた。早速読んだのでメモ。

===小川進、「競争的共総論」、白桃書房、2006年.===

本書は、製品革新プロセスにおける、消費者とメーカーとの、あるいは、小売(コンビニ)と
メーカーとの【競争的共創】という萌芽的な事象に着目している。良品計画、セブンイレブン、
ワールドなど複数の事例の、製品開発の実態、成功要因、効果(実績)等が紹介されている。

   【競争的共創】 複数の主体が開発過程で協同し、競争的に
           消費者にとっての付加価値を共創していく有様(pp.8)

研究としては、組織論における「知」や組織間関係の議論を基とするイノベーション研究と
いえる。製品革新に貢献する多様な情報・知識は多様な場所で生成される、
   例) 技術情報      @メーカー、
      商品横断的情報  @流通企業、
      製品使用情報   @消費者

とした上で、分析事例は、多様な場所で活動する主体が共同することで、新規性・独自性の
高い製品を生み、高い売上高を達成した事例、と位置づける。
同時に、ラグビー型といわれる日本式の製品開発プロセスが、組織の枠を超え、サプライ
チェーンにおける垂直連携に拡大しつつある、と捉えている。

  ※ 一連の組織間関係の研究 (竹内・野中、1986 など)
      米国式 : リレーアプローチ   ≒ モジュール
      日本式 : ラグビーアプローチ  ≒ インテグラル

こうした事例分析を踏まえ、著者は、消費財市場で競争的共創の重要性が高まっており、
流通企業には「資源吸引」という視点が、メーカーには「複線型開発」という視点が必要と
主張する。地道なインタビューや、売上金額などの数値データに基づく事例分析に裏打ち
されており、説得力のある主張となっている。

ただ、「複線型開発」が大半のメーカーで可能なのかは少し疑問もある。本書で分析している
ワールドは、SPA(製造小売業:Specialty Stores of Private Label Apparel)。
小売の売上げデータを持っているからこそ、期中における商品企画・販売商品を含めた
複線型開発が可能となる。販売実績(POS)データを持たない大半のメーカーでは、
結局、流通の「資源吸引」によって翻弄され、疲弊しがちなのではないかといえる。

とすれば、本書は、淡々と事例分析して提言をまとめているようで、実は、
「これからの時代、消費者と接点を持つコンビニやSPAは強い。が、そうでない
 メーカー達よ、どうするんだ!」という製造業、ひいては、モノづくり日本への大きな
警鐘と取れる。強烈なエール、とも取れますが。さて、どちらなのでしょう。

::: 余談? :::
本書でほとんど言及されていない点として、大半の消費財流通に介在する卸企業が
今後どのような役割を果たすかは気になるところ。消費財市場で、大手流通のシェアは、
商材次第だが過半数はいかないはず。この点、卸企業は、モノの流通の表裏で、複数小売
にまたがる情報を集約できる立場にいますから。

::: 余談? :::
一番イイタイコト、もしや、「日本では製品イノベーションは、メーカーだけでなく、
流通企業や消費者巻き込んで進んでるんだぜっ」ということかも?グローバルな先生だけに。
この本、翻訳を想定しているんだろうなぁ・・・文中に”日本”って表現が頻出するもんなぁ・・・

私もこんな本が書けるような研究者になりたい。

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